どこにいったか、、、久子さんの入れ歯

入れ歯が見つからない、ヘルパーさんが探してくれたが見つからない。

 

訪問歯科の先生の報告書には、新しいものをつくるかどうか相談したい、と書かれていた。

 

そういえば、入れ歯が合わないのか、甘いものを食べている時、少し痛がっていた。

 

大切なぼくの母親。入れ歯が無いなんて、元気な久子さんはまだ何年も生きるのだから、

『入れ歯を作らねば!』

と優しい気持ちを全面に出し、久子さんに言った。

 

『新しい入れ歯作ろうね』

 

入れ歯のない口で、なんかモグモグ言っている。

 

よく聞いてみると、

 

『あと何年生きられれるかわからないのに、新しいものなんていらない!』

 

すかさず、ぼくは

 

『いやいや!入れ歯がないモグモグは、かっこ悪いでしょ』

 

プライドの高い久子さんは納得したのか黙っていた。

 

家族が知らないところで、かなりドタバタがあったのだろう。

数日後、久子さんは入れ歯を付けて朝食にあらわれたらしい。

 

どこにあったのか・・・みんなが驚く中、久子さんは

 

『何言ってんの!私の大事な歯よ!失くしてなんかいないわ』

と平然としていた。

 

そして、また数日後。

 

歯科医師さんへ相談

とにかく、入れ歯が合っていないかもしれないので、訪問歯科の先生に会って話を聞くことにした。

まだ若い女医さん、とても明るくまじめな歯科医師さん。

私も会って話ができたので安心した。本当に久子さんは人に恵まれてる。

良い先生が担当で、本当によかった・・・。

 

先生曰く、

入れ歯を失くされた時、新しい入れ歯を作るしかないかと思ったのですが、なにせ高級な入れ歯を使ってらっしゃるので、次にどのような物を作ったらよいか相談がしたかった。

とのこと。

 

なんと、久子さんはしっかり自分にお金をかけていたのだ。

 

十分働いてきたのだから、当然だ。

健康のためにもよかったのだろう。

とにかく、先生は入れ歯が見つかったことに大喜びだった。

 

先生に心配をかけ、何も事情を知らない家族は、そこまで心配せずに今日を向かえたことに感謝です。

 

認知症の高齢者を施設にあずけるということは、家族が知らないところで家族の代わりとなって、介護や医療の専門スタッフに、たくさんの苦労を掛けているといことを今回改めて思い知った。

 

先生本当にありがとう。

 

先生は歯の中をしっかり見てくれて、高級入れ歯を歯茎にぴったり合うように、工具で削りながら微調整してくれた。

 

またこれで甘いものをバクバク食えるだろう。

 

久子さんよかったね。

 

先生は優しい長男さんと会えて本当によかったと言ってくれた。

 

『それほどのことでも~』

 

歳を忘れて、クレヨンしんちゃんのように照れてしまった。

 

 

 

2022.04.18

カテゴリー:ぼくの久子さん