前回のボヤ騒ぎから数日
『火事になって死んでしまうか、大やけどを負って大変なことになったかもしれないんだよ。無事でよかったね。』
久子さんにボヤの説明しても、他人事のようで驚く気配もない。びっくりするほど平然としている。
普通の人なら、火事で死にそうになった経験をすると、しばらくの間は精神的に辛いだろう。
認知症は色んなことを“覚えていない”。これが「メリットにもなる」ということを学んだ。
大変な毎日が始まる。
そんなことより、今日からマンションで一人暮らしをしている久子さん。今後一人でいるときは、絶対にガスを使えない。そうなると当然、調理や入浴はできない。
施設に入るといっても明日からすぐに入れるわけではない。少なく見ても、施設を探し手続きをすると1か月は覚悟した方がいいだろう。
でも、その間ガスが使えなくなる久子さんはどうなる?
『よし決めた!』ぼくが見てやろうじゃないかっ!
たかだか【1か月】母親なんだから一緒に暮らすんだっ!
だが、長男のこの稚拙な考えは、半日と持たなかった・・・。
情けないが、人間、無理なものは無理。
夜は自分の部屋で休みたい。
そこで次の手を考えた。
・毎日必ず来る。
・ご飯を作る。
・お風呂を沸かす。
・ご飯を作る。
・お風呂を沸かす。
あとは、
ガスの元栓を閉めてから帰る。
これだけは絶対に忘れてはいけない。
2022.03.01
カテゴリー:ぼくの久子さん