かわいい久子さん

「いい天気だねー、風が気持ちよくて最高!」

 

久子さんは目覚めるなり、気持ちよさそうに呟いた。

 

「あれ、あんたいつ来たの?いつドア開けた?」

 

「30分ほど前だよ、久子さんはどら焼きを食べたらベッドに横になってスヤスヤ寝てたよ」

 

「あ、そうだったの、へっへっへー」

 

もう以前のように、そんなことない!親をばかにするな!

 

といったケンカにはならなくなった。

 

久子さんも丸くなってきたので、穏やかでかわいい認知症高齢者の仲間入りをしてくれている。

 

「いくつになったかなーもう80歳は越えたかね」

 

「そうだね87歳になったからずいぶん長く生きているよ」

 

こちらも何度同じことを言われても、不思議と苦にならなくなってきた。

 

何度も書いているかもしれないが、認知症介護の問題は、やはり若年性あるいは70代80代前半の、まだ体がお元気なうちが大変で、80代後半になってくると落ち着いてくる。

 

久子さんの長い人生、おそらくまだ10年は続くと思われる、器用で勘のいい小さな体の女性の人生は、いよいよ終末期を迎えた。

 

石川県で生まれ育ち、戦争を体験し、大家族の家に嫁ぎ、50代から東京で働きだしたこの小さな体にはパワーがいっぱい。波乱万丈の人生の締めくくりが大事!と長男は考えている。

 

やばいよ、やばい、とてもやばい!

 

先日、ぼくの63歳の健康診断の数値がでた。

 

やばいよ、やばい!

 

とてもやばい…

 

中性脂肪、コレステロールは以前から悪かったが、今回から糖と尿酸値も仲間入りした。

 

このまま続くと、久子さんより先にとは言わないまでも、認知機能の低下が早くやってくることは夢ではない!

 

久子さんから「あんたボケたんじゃないの?」と言われて笑うことができなくなり、

 

「いくら親だからといって言っていいことと悪いことがある!自分の子をバカにするな!」

 

と感情的になったらどうしよう。

 

とにかく生活習慣を変えなければ…

2024.05.22

カテゴリー:ぼくの久子さん