医療従事者、介護従事者の連携
医療機関が運営するデイケアや、介護施設のデイサービスを見学すると、リハビリに取り組む、パーキンソン病を発症している高齢者をよく見かける。
手足の筋肉がこわばり、歩くのも少しずつしか前に進めない。
じっとしていても手足が震えていて、食事をするのも大変そうだ。
40歳前後で発症する人が多いらしいので、ここに通っている高齢者は、10年以上の長きにわたってリハビリを続けているのだろうか。
服の着替え、食事、入浴、トイレ、外出、生活のすべての行為に影響してくるので、精神的な影響も大きいと思われる。
現代においても完治は難しく、治療としては、薬で症状をコントロールしながら、運動機能が少しでも良くなるようリハビリに通うことが中心になるという。
それでも、治療方法はよくなってきたことで、重症化して寝たきりになる人は減っているようだ。
私も前職で、リハビリ型のデイサービスの開発運営に携わった時、専門家による施術と薬の治療による利用者さんの反応を観察していて、何度か強く感動したことがあった。
一歩一歩、ほんの少しずつしか前へ歩くことができない、パーキンソン病を患っている高齢者が、理学療法士による訓練で、通い始めて1か月2か月と経つうちに歩き方が変わってきたのだ。
その方は理学療法士だけでなく、薬剤師にも恵まれていた。
そのため、きちんと薬物療法の効果もあったのだろう、理学療法士と薬剤師の連携がとれて、その方のQOLつまり生活の質は大きく改善したのだ。
理学療法士と薬剤師の連携を見て、すごいなぁと思ったのは、医師にもできないことが、この連携により見事にできてしまうことだ。
もちろん完治はできないが、あきらかにその方の生活レベルは向上したのだ。
感動の裏にふと浮かんだ疑問
このような感動の現場を見て素晴らしいと思ったと同時に、疑問もわいた。
医療や介護に携わる国家資格を持った専門家はたくさんいるが、どこまで連携しているのだろうか。
それぞれが仕事をすると、必ずその結果は書類として残るようになっている。
しかし、それらは誰に対する報告なのだろうと不思議に思うことがある。
ファイリングされてしまうと、次にその資料はどのように使われるのだろうか。
高齢者の医療においては、完治させるというよりは、悪くならないように薬でコントロールする病気がほとんどで、それには継続的な観察による、治療方法や薬の変更が必要になる。
疾患をもった一人の高齢者には、多くの医療と介護従事者が携わっていて、その高齢者の生活の質は、携わっているそれぞれ専門家の連携次第で大きく変わることが想像できる。
それぞれが作る報告書は、携わっている他の医療介護関係者が目に触れて、あるいは報告書をもとに話し合いを行うことで、初めて適切な医療や介護が行われるのではないだろうか。
医療の世界をよく見てほしい、医師と看護師は常に近くにいて治療に当たっている。
理学療法士や作業療法士も比較的医師の近くにいる。
ところが薬剤師だけは少し離れていないだろうか?
最近では厚労省も、かかりつけ薬剤師の役割を明確に打ち出し、医師や看護師との連携が進んでいるように見えるが、高齢者をとりまく医療や介護の世界では、理学療法士、作業療法士、ケアマネージャー、介護福祉士、管理栄養士といった専門家の役割が大きい。
かかりつけ薬剤師が、そのような介護従事者との連携が深まることを願いたい。
2022.03.15