私の知見から、認知症高齢者の介護問題について、現時点で国が考えている将来に向けた方針は、介護する側の健康悪化や人権を全く考慮していないとの主旨で、日本経済新聞の経済教室、私見卓見に『認知症介護施設を拡充せよ』を投稿したところ、2025年8月15日付けで掲載された。

 

その内容の主旨は以下の通りである。

 

あと5年もすると団塊の世代が80歳を超え、日本人の3割が65歳以上になる。そして認知症患者数は高齢者の14%の約523万人となり、高齢者の7人に1人が認知症患者になると推計されている。この問題に対して国は、認知症を患った人たちが、住み慣れた家で、その人らしい生活を送ることができるよう、そして尊厳を保ちながら安全に暮らすことできるようにとの方針を出している。その具体的な施策は、地域の医療や介護、そしてボランティアなどの多職種が連携して見守っていくというものだ。

 

しかし、認知症高齢者はその異常な行動から24時間体制で見守る必要があるため、住み慣れた家での家族中心の介護では、公的介護保険サービスを利用しても無理があり、これでは家族の健康悪化、介護離職、場合によっては虐待へと問題は大きくなってしまう。

 

そもそも意思の疎通がはかりにくい認知症高齢者を、在宅で看ていくということは、医療介護従事者にとっても効率が悪く、家族負担だけでなく、国や自治体の医療介護費用の増加にもつながる。さらに大きな問題は、生産年齢人口が減る社会において、企業の要職についているであろう団塊ジュニアの介護離職が増える可能性が高くなることである。

 

従って、対策の重要なポイントは、認知機能が衰えてきた高齢者が、その人らしい生活を送ることができて、医療介護費用の面でも効率のよい施設を増やすことではないだろうか。

このような内容で日経新聞の私見卓見に投稿し掲載された。

 

この問題がなにより大きいのは、介護する側が壊れてしまう、そして介護離職につながり、社会保障費の問題にとどまらず、日本の経済全体にも大きな損害を与えるであろうことだ。

 

認知症高齢者の尊厳を守り、その人らしい生活を送れる、そのような住まいはどこなのか、問題が大きくなる将来において、関係者が研究や改善を重ね、より良い場所になっていく可能性は在宅よりも、医療介護の専門家がいる施設であるべきだと言いたい。