新型ウイルスの脅威は想像をはるかに超えていた

 

感染して人にうつせる状態でも無症状、そして飛沫感染する新型コロナウイルスの脅威は、高齢者や疾患を持っている弱い人たちに容赦なく襲いかかり、多くの死亡者を出した。

2022年10月現在、街は通常の経済活動を取り戻してきたが、高齢者施設ではまだ予断を許さない状況が続いている。

緊急事態宣言が発令されたころは、高齢者施設のスタッフはどれほど大きな不安の中で、お仕事をされていたことか、母親を預けている身としては、本当に感謝の念に堪えない。

 

今後、いつまた新型の感染症が流行るかわからないので、この経験をぜひ活かして感染症対策を進めてほしい。

 

高齢者施設がコロナ禍で定着したこと

高齢者施設では、これまでもインフルエンザやノロウイルスなどの、重症化あるいは死亡にいたる確率の高い感染症を経験しているが、マスク着用や手洗い、うがいなどの基本的な対策は十分ではなかったと思う。

 

しかし今回のコロナ禍は、多くの日本人の日常生活の中に、マスク着用と手の消毒の習慣を定着させてくれた。

 

このことは外から入ってくる感染源の防止に、以前とはくらべて大きな違いがあるので、高齢者施設にとっては、非常にありがたいことだ。

 

以前も高齢者施設では冬になると、アルコール消毒設備が設置されていたが、訪問者の全員がきちんと消毒しているとは思えなかったし、マスクの着用者などほとんどいなかった。

 

しかし、未知のウイルスが流行った時には、これらの基本的な予防策だけでクラスターの発生を防げるものではない。

高齢者施設は、未知の感染症によるクラスターが発生したことを想定した備えを行い、いつでもきちんと使えるようにマニュアルを作成し、指導と訓練を定期的に行ってほしい。

 

具体的には、重篤な症状の入居者さんをお世話するための防護服や医療用マスク、フェイスシールドをいざという時のための数量を備蓄する、さらに隔離するための場所を決めておくことも重要だ。

 

なぜなら、クラスターが発生したような状況下では医療機関が、重篤な高齢者を受け入れてくれるとは限らないことを想定し、高齢者施設で見守るしかないことを覚悟しなければならない。

もっと言うと、感染者の治療も大事だが、働く人を守るための対策に重点を置くことを優先するべきであろう。

 

スタッフも当然感染することを想定しなければならない。

濃厚接触者となれば、休ませなければならないが、その場合の給与に関する休業補償も手厚くしてあげることは当然のことだろう。

 

スタッフの感染者が増えた場合、ボランティアを検討する必要が出てくるだろう。

 

地域で活動する人たちとも、日ごろから話合いを行い、資格をもった専門家以外の人たちにどのような事をお願いできるのか、情報を確保し共有しておく必要があるだろう。

 

介護施設で働く人たちの不安を払拭するためには、今回のコロナ禍で見えてきた、未知の感染症によるパンデミックが発生した場合に備えた、物資の備蓄とマニュアル化と訓練が必要だ。

 

コロナ禍は、人類が未知のウイルスや細菌と共存するための試練を与えたが、その苦難の中で得ることができた叡智を、信ずるものだけに、安らぎも与えてくれたのではないだろうか。

2022.10.14

カテゴリー:介護全般