ケアマネージャーとは

 

介護支援専門員という専門用語を言われても何のことかわからないが、ケアマネージャーと言われると、「あ～あの人たちのことね」とピンとくる人が多いだろう。

介護業界の専門用語は漢字が多く、東南アジアから多くの人が日本の介護を学びに来ているが、漢字が大きな障壁になっているようだ。

ケアマネージャーとは、とてもとても重要な役割を持ち、今後ますます忙しくなると思われる、日本の社会保障制度の中の専門職だ。

日本の国民は40歳から介護保険料を払う義務があるということは、同時に65歳以上になって日常生活に障害が生じるようになったとき、等しく介護サービスを受ける権利を持っているということ。

今更ながらだが、介護保険制度は本当によく考えられた社会保障制度のひとつで、日本に生まれたことを感謝しなければならない。

ひとりで生活することが困難になってきた高齢者が、どのような環境にあろうとも、最低限の生活ができるような仕組みだから、多様なサービスが提供され、多くの職種の専門家が関わる、とても複雑な仕組みともいえる。

 

介護サービスを受ける必要があると認められたとき、どのサービスを受けるかの意思決定は、原則介護を受ける本人がすることになっているが、素人が複雑な仕組みを、高齢者の様々な環境に合わせて最適に組み合わせることは、簡単にできることではないし、当然のことだが、不公平や不正があってはいけない。

このような背景から、ケアマネージャーという専門職が考え出されたのは、納得がいくことであり、その責任は重大だ。

 

ケアマネージャーの仕事

 

要介護度や家族との関係、健康状態、経済性など、多方面の視点から適切な介護サービスの組み合わせを見つけ、亡くなるまでの期間、継続的に調整していくためには、専門知識だけではなく、実務経験、多職種とのネットワークなど、多くのスキルが必要となる。

体力やストレス耐性といったフィジカル面が弱くても務まらないだろう。

そのため、ケアマネージャーの資格をとり実務につくためには、かなりハードルが高く、2～3年頑張ればできるというようなレベルではない。

まずは資格試験だが、医療や介護、福祉の業界で実務経験5年以上をもつ専門職（医師・保健師・看護師・薬剤師・介護福祉士・社会福祉士・理学療法士・作業療法士・管理栄養士など）でなければ、受験資格はない。

 

ケアマネージャーの資格試験は合格率が20％未満と低く、さらに合格したあとも約90時間の実務研修を受け、終了し都道府県に登録して初めてケアマネージャーの実務に携わることができる。

 

仮に高校卒業後ケアマネージャーを目指すことを考え、福祉系の学校を卒業し介護福祉士あるいは管理栄養士の資格をとり、実務経験5年を終了することを計算すると、ケアマネージャーの実務に携わることができるのは、早くても27歳ころだろう。
（様々なルートがあるため、ここではわかりやすい一般的な高校卒業後のルートを示した）

 

さらに、都道府県から有効期限の入った登録証が交付されケアマネージャーの実務に就いた後も、更新研修が続き、5年ごとの更新には必要な研修を修了していなければならない。

 

このように、ケアマネージャーは大変忙しい実務をこなしながら、長時間といえる研修も自費で参加し（所属する組織によっては補助金を出すところもある）、高齢者の生活を支えてくれている。

医師や看護師、薬剤師などの医療関係者と高齢者の情報を共有しながら、支持を仰ぎ、本人との定期的な面談内容と家族の要望を考慮し、地域の様々なサービスから最適な支援プランを作成している。

高齢者の生活環境は一様ではなく、投げ出したくなるような困難事例も少なくないだろう。

 

ルールに沿って解決策を見出しているのだろうが、家族間の問題などケアマネージャーの職責の範囲を超えてくると、見守るしかないだろうが、虐待につながる可能性もあり、ケアマネージャーの経験に頼る部分は大きい。

 

このようなことから、ケアマネージャーの登録証に有効期限があり更新研修が厳しいことが理解できる。
介護保険制度は施行されて20年以上が経ち、ようやく、介護を受けることは恥ずかしいから隠すという空気が、人生100年時代、地域の介護を受けることは当然のことに変わってきた。

 

これはとても良いことだが、その裏ではケアマネージャーが大変苦労をしながら、支えてくれていることを忘れてはならない。

家族も介護する人として、ケアマネージャーに協力する気持ちが大事だと思う。

2022.07.09