介護にも種類がある

 

施設介護という言葉があり、在宅介護という言葉があります。

 

もちろんご想像通りで、これまで住んできた自宅にいながら公的介護サービスを受けるか、介護の専門家が24時間一定数以上配置された施設に入って公的介護サービスを受けるかの違いです。

公的介護保険制度がなかった2000年以前は、自宅での生活が困難になった高齢者は病院で暮らしていました。

 

そうなんです、治療をするというよりは、病院で生活している、だから病院でお亡くなりになる方がとても多かったのです。

 

しかしこれでは、高齢者が増えることが分かっていた日本は、医療費が莫大に増えていき、将来大きく財政を逼迫することになるため、国は医療に関する思い切った構造改革にふみきったのです。

 

それは医療ではなく介護として必要なサービスを、公的医療保険から切り離すという構造改革です。

 

その真意は、医療保険は医師や看護師の高い給与を確保するため、医療機関に支払う給付金は下げず、介護保険は介護事業者に支払われる給付金に対して大変厳しく設定し、日本の社会保障費をコントロールしようとしたのです。

 

簡単に言えば、出来高払いで青天井のように膨らんでいく医療費から、できる限り国がサービスの量や質、そしてその単価をコントロールできる部分を切り離し、厳しい上限を設定したのです。

 

介護とは、食事、入浴、排せつ、着替えなど人が生きていく上で最低限必要な行為に対して、介助する行為ですから、医療と分けることは当然です。

 

しかしそれでも、2000年からスタートした介護保険制度にかかる費用は大きく、2006年には大きな制度改正があり、介護の経営者側にとっては大変厳しい改正となり、多くの介護事業者が赤字経営に転落しました。

 

2006年の改正後は、地域包括支援センターが設置され介護の窓口となり、高齢者を地域が連携しながら見守り、認知症の高齢者も病院から地域で暮らせるようにする、地域包括ケアシステムが叫ばれるようになりました。

 

つまり、病院は治療するところで、認知症の患者さんといえども、病院は生活する場所ではない、ということを明確に打ち出し、社会保障にかかる費用を抑える政策を強く進め始めたのです。

 

在宅介護は限界がある

 

しかし在宅介護には限界があり、自宅で介護を受けながらの生活が困難な高齢者を受け入れる施設が足りません。

 

特別養護老人ホームやグループホーム、介護付き有料老人ホームでは、入居者の24時間の生活すべてが包括的に公的介護保険サービスで賄われますが、これを増やすばかりでは国も自治体も費用負担が大きくなり、いくら制度を厳しくしても社会保障費の抑制にはつながりません。

 

そこで考えられたのが、在宅でサービスを受ける高齢者と同様に、週に何回の利用とか、1日に30分の介助何回とか、本当に必要な介護サービスだけを細かく計画し受けられ、高齢者が住みやすい集合住宅である、サービス付き高齢者向け住宅だったのです。

このサービス付き高齢者向け住宅を住まいの中心とし、地域の医療機関連、介護事業者、民生委員、家族、行政が連携して高齢者を見守りケアしていく仕組みを整えることで、病院で生活しなくてもいいように、高い費用がかかる施設を増やさなくてもいいように、また認知症の高齢者でも生活できるようにしてきたのです。

 

従って、サービス付き高齢者向け住宅は介護サービスの分類で見れば在宅ですが、施設に近い環境で高齢者が暮らせるため、家族にとっては大変安心な住まいなのです。

 

しかも在宅サービスということは、家族や本人にとっては、施設サービスよりも料金が安く上がるというメリットもあるのです。

 

国や自治体にとっても、家族にとっても、とてもよい高齢者が住む環境なのです。

 

2025年を目の前にした今、サ高住の意味を地域も家族も理解し、運営する企業は団塊世代に合った運営を工夫し、持続可能な社会になることを切に願っています。

2022.06.20

カテゴリー:介護全般