久子さんの認知症を確信してから8年以上が経ち、そしてぼくの久子さんを書き始めてから2年近くになり、ようやく落ち着いて、これまでの久子さんとのバトルを振り返ることごできるようになった。
父が亡くなり久子さんが一人暮らしを始めた頃は、よく怒鳴られた。
「バカにするな!もう2度と来るな!顔も見たくない!」
「いくら息子でも、言っていいことと悪いことごある!」
こんな言葉を母親から浴びせられ、もちろんこちらも黙ってはいられない。
「認知症になってしまったから、しかたがないでしょ、おとなしく子供の言うことを聞いてよ」
ぼくは仕事がら、認知症高齢者への教科書的な対応はわかっていても、このようなNGワードを何度も何度も久子さんに浴びせていた。
そしてぼくが久子さんのことを心配すればするほど二人の関係は悪化していった。
親子関係だから、お互いに許せない。虐待は遠くの話ではない、と何度も思った。火の始末、オレオレ詐欺、病気、行方不明、本当に心配なことが多く、一人暮らしの危険になす術がなく、神に祈るしかなかった。
そんな期間が6年ほど続いたが、あおぞらにお世話になることで不安は激減した。
最近では、ぼくの年齢を何度聞かれても、落ち着いて丁寧に答えることができるようになった。
高齢者とか認知症とか、ひとくくりにして、対応方法を考えることの無意味さを、ぼくはこの8年間で学び、虐待をギリギリ回避できたように思う。
NHKのニュースで、夫が認知症の妻の介護に我慢できず、首を絞めてしまったと、2日にわたって報道していた。強く叫びたい!なぜそんなニュースを住所名前まで出して報道する必要があるのか!?
高齢で妻の認知症介護に疲れている夫を、あたかも残忍な殺人事件と同じような報道をしている。
よくNHKでは認知症介護について、報道しているが、NHKは何もわかっていない!高齢の夫は休む暇もなく、これから取り調べや裁判、そして刑務所暮らしが始まる。
それだけでも大変なことなのに、全国放送までされて、、、とても悲しくて痛ましい、、、
ぼくも同じような加害者になる、そんなことを簡単に想像できる、そのような場面はいくつも経験してきた。久子さんに感謝しなければならない。
あおぞらでの一人暮らしをしてくれたことを。
2023.10.18