介護離職問題に関する対策が機能していないという事実

 

内閣府や厚労省のホームページにある、仕事と介護の両立に関する様々な報告書を読んでみると、いかに介護離職問題に関する対策が機能していないかがわかる。

 

それらの内容から感じ取れることは、働き方改革と女性の活躍を推進するテーマと介護離職対策がセットになっているため、介護問題は出産育児に関する対策の実績の影に隠れてしまっていることである。

 

介護離職問題への対応に関しては、とても残念な状況がどの企業にも感じられる。

企業において女性の活躍が推進され、いくつになっても働ける環境がある、とても素晴らしい社会に変わってきたと思う。

 

だが、それは介護問題に当てはめて考えると、共働き世代が介護をしなければならない割合が高くなることを意味している。

また、男性が介護をする割合が高くなることを意味している。

 

団塊の世代が後期高齢者になる時代はもう目の前、団塊のジュニアは企業のベテラン社員や要職についている人が多いだろう。

 

相談窓口は機能していますか?

 

人生100年時代、大小全ての企業に訪ねてみたい、介護離職対策は継続的に調査分析、そしてプランの見直し行っていますか?

そして、相談窓口は機能していますか?

おそらく、何年も前に、法定の制度にあわせて就業規則を整備し、従業員向けの研修を行い、人事労務担当者を相談窓口として設置したところで、安心している、その後の検証を全く行っていない、そんな経営トップの姿が思い浮かんでしまうのは、私だけでしょうか。

 

経営トップと、人事担当役員、経営企画担当役員に言いたい、もう一度原点に戻って、介護離職問題の対策がどのように機能しているか、介護問題に直面した人が相談した実績があるか、その結果働き方を見直し両立させている人がどれだけいるのか、確認してほしい。

 

おそらく育児と比較して介護の利用は、おどろくほど少ないであろう。

 

従業員数5000人を超える大企業でも、介護相談窓口にくる問い合わせは月に数件程度ではないだろうか。

 

その数字が事実なら、隠れ介護離職が増えていることになる。

 

最初にすべきことは?

 

では、最初にすべきは何か、外部に信頼できる相談窓口を設置することだ。

 

これから急激に増える介護問題を考えると、社内の人事労務担当者が片手間に行っていたのでは、今まで同様機能しないだろう。

 

今担当している人は、介護に直面した人が抱える問題について、どの程度の知識を持っていますか?

日本の介護保険の仕組みや施設の種類のこと、医療保険や高齢者の病気や終末期医療のこと、認知症のケアの大変さ、地域包括ケアシステムのこと、成年後見制度や家族信託のこと、高齢者の認知機能低下に対する金融機関の方針など、様々な取り組みが始まり高齢者をめぐる環境は年々良くもなり、複雑化もしています。

 

今担当している人は、どのくらい包括的に理解していて、人にうまく説明できますか?

 

様々な問題に対してバランスよく解決策が見える人でなければ、どうして人生の分岐点に立った人の人生設計の相談にのれるでしょうか。

 

おそらく、経営トップは、従業員と比べて自分の時間を自分の裁量で作ることができ、経済的にも余裕があるため、介護問題に直面しても、立場を失うほどの危機的状況に追い込まれることはない、まわりにいる幹部も同様、だれも問題視していない。

 

そんな経営トップが気づいたころには、手も足も出なくなり、会社の存続が危ぶまれます。

いろんなコラムで同じことを発信しますが、介護離職問題は経営トップ自らが積極的にかかわり、単なる福利厚生の一部と考えるのではなく、会社の重要な成長戦略としてとらえなければ、介護離職は増えることはあっても減ることはないでしょう。

 

早く手を打つ企業とそうでない企業の差は、時間の経過とともに加速度的に大きくなる。

2022.04.21

カテゴリー:介護と仕事の両立