家族の介護と離職率の関係

 

令和2年(2020)3月の労働政策研究・研修機構がまとめた、家族の介護と就業に関する調査は、介護休業法の中の様々な制度でも、離職率の改善効果に差があることを示している。

 

特に目立って効果があったのは、所定外労働免除制度つまり残業の免除、そして短時間勤務制度だった。

 

介護に直面した労働者が、介護と仕事の両立を考えたとき、介護保険サービスが入る時間帯と、家族がいる時間帯の調整が必要になるが、これがかなり大変。

 

デイサービスに入る曜日や送迎の時間、ヘルパーが入ってくれる時間など、ケアマネージャーにある程度は調整をしてもらえるが、介護する家族が長時間労働ではケアマネージャーも調整に苦労する。

ヘルパーの人材不足もあり、朝や夜のヘルパー確保が難しいとなれば、その時間帯は家族がいることが望ましいだろう。

 

さらに大きな問題

さらに大きな問題は、介護をする労働者の健康状態だ。

 

長時間労働に加えて介護では、身体的疲労と精神的ストレスが溜まり、健康上の問題から離職に追い込まれる可能性が高い。

 

このような背景から、1日6時間に短縮する、あるいは週の日数を減らすなどの、短時間勤務への変更は、介護休業法の制度の中でも介護離職対策として有効だと言えるだろう。

 

2000年以前に法制化された介護休業法も、詳しい調査研究により法改正が進み、労働者にとって使いやすくなってきた。

 

問題は、制度が改善されているにもかかわらず、法改正後、就業規則を変えていない、あるいは従業員に周知をしていない企業が多いことだ。

 

短時間勤務の制度、そして残業免除の制度、この二つの制度は、有効性についてどちらも同程度の数値を示しており、この二つの制度がないに等しい勤務先の離職率が18%前後の数値に対して、この二つの制度のどちらかでも利用している勤務先の離職率は同じ4.5%を示している。

 

介護離職問題に対する意識格差

 

このような結果を見ると、日本の企業経営者の介護離職問題に対する意識格差が大きいことを知らされ、人材確保が厳しい中、多くの企業が経営方針の方向を間違えているように思えてならない。

 

コロナ禍で働き方に対する従業員の考え方も変わってきただろう。

 

これを機に、従業員向けの介護に関する実態把握調査を行い、介護休業法の制度を使いやすいものにカスタマイズする、さらに全従業員の長時間労働を見直し、従業員が短時間で集中して働ける環境を作ることが、企業にとって生き残りをかけた必要最低条件ではないだろうか。

 

そして、もうひとつ大事なことは相談窓口の機能を高めることだ。

 

よく確かめてほしい、おそらく社内の窓口は十分機能していないかもしれない。

 

人事労務担当者が決して悪いわけではなく、他の業務が忙しいと、相談が来ない事をよしとしてしまい、相談窓口業務は事実上機能がストップしてしまう。

 

社外の相談窓口を設置し、外部の情報を取り入れ、法定の制度を超えて利用しやすい制度へと就業規則の見直しを行うことで、初めて会社の本気度が従業員に伝わるだろう。

 

いまだに介護リテラシーの低い経営者は引退したほうがよい。

2022.04.12

カテゴリー:介護と仕事の両立