ハウス食品グループ本社は2021年9月から、全社員に介護研修を実施している

40~50代社員の6割が3年以内に家族の介護に直面する可能性がある。

団塊の世代が後期高齢者になる「2025年問題」が迫り、中核社員の多くが仕事と介護の両立に直面する。

公的支援制度などの活用が不十分だと、個人で負担を抱え込む「隠れ介護」が経営リスクとなる。という記事の序文だった。

※日本経済新聞より

 

多くの人が介護問題に直面しているという事実

さらに記事を詳しく見ると、ハウス食品グループ本社では、国が定めた介護休業による労働者が取ることができる法定日数の2倍以上となる通算217日の介護休業日数を用意しているとのこと。

法定の制度では3回までの通算で93日を企業が用意する必要があるところを、31日の7か月分にあたる217日を用意しているということだろう。

 

社員からの相談はこれまで多くはなかったが、調査結果から見えてきたものは、もっと多くの人が介護問題に直面している、そして3年以内には全体の6割に近い人が直面するリスクだった。

この記事からもわかるように、企業が抱えるリスクの中でも大きな問題となる介護離職の実態は、表面上ではまだよく見えないが、水面下では急激にリスクが高くなっており、3年以内には大きな問題となって現実化する可能性が高いということだ。

 

ハウス食品グループ本社のように、早めにトップが気づき手を打っている企業は、まだ少ないだろう。

このような記事や、実際の取り組み内容が報道され、多くの企業が改革を進めてほしい。

 

介護問題に対する企業のあるべき姿

形だけでなく、実用的な仕事と介護を両立させるための仕組みを速やかに構築し、企業トップ自らが従業員に対して、働き方を見直すことの意味、具体的な方法を説明すること。

そして対外的に企業の成長戦略の柱として、介護問題に直面した場合でも、職務を変えずに働くことができ、従業員が顧客満足を高めるサービス力を持っていることを市場にアピールしてほしい。

介護問題に直面した従業員が相談しやすい体制があり、そして上司だけでなく一緒に働く同僚も理解してくれる、職務を大きく変えることなく働くことができる、このような環境を体験した従業員の会社に対する思いを想像してみてほしい。

きっと会社に対して、上司に対して、同僚に対して、大きな感謝の気持ちを持つことは容易に想像できるだろう。

会社に対するエンゲージメントは高まり、会社の生産性や売上の向上への影響は計り知れない。

そして、社内で優秀な社員が育つとともに、社外から優秀な社員を獲得できるメリットも大きいだろう。

介護離職問題は、いまや単なる損失回避のリスクコントロールに関する重要項目でなく、企業が掲げる積極的な成長戦略として考えるべきキーワードである。

2022年、上場企業のトップの何割がこのことに気づいて行動するか楽しみである。

 

2022.02.24