在宅医療で何があって、担当医師を猟銃で撃たれなければならないのか

 

2022年1月下旬、在宅医療の医師が猟銃で撃たれ死亡した事件が、埼玉県ふじみ野市で発生した。

 

在宅医療の現場を多く見てきた身としては、強い憤りの感情が心の中に湧き上がり、事件当日、早く真相を明らかにしてほしいと思った。

医師だけでなく、担当していた男性理学療法士も巻き込まれて重症を負っていることから、どう考えても、精神的に異常な状態からの衝動的な犯行としか思えない。

在宅医療を受けていた容疑者の母親が亡くなって、担当医師が弔問に訪れていたとのこと、よほど大きな責任感や使命感をもった医師だろう、また在宅で診ていた容疑者の母親への思いも強かったのではないだろうか。

 

在宅医療を専門にしているドクターの日常は過酷で、昼も夜も連絡が来た時のことを考えて待機している。

高齢な患者さん、がん末期の患者さん、多くの患者さんのお亡くなりになる瞬間まで、本当に親身になって診てくれている、強い使命感をもった医師が多い。

高齢社会にとって在宅医療の経験豊富な医師の存在が、どれほど救いとなり有難いか、家族を診てもらった経験のある人はよく知っている。

そして、この事件で亡くなられた医師に診てもらっていた、今も在宅で療養している多くの患者さんの気持ちは、どんなに辛く悲しく残念に思っているだろう。

 

大阪の心療内科クリニック放火事件からまだ1か月、また地域にはなくてはならない医師が命を奪われた。

 

 

最近、見ず知らずの他人を巻き込んだ事件が多いが、時代背景の影響が大きいのではないか、続かないよう願うばかりだ。

亡くなられた医師のご冥福と、被害にあった医療従事者の早い回復をお祈りするとともに、地域社会が協力して再発防止に努めなければならない。

 

 

訪問診療・訪問看護・訪問介護などの医療介護従事者の安全確保は対策が必要

 

特に、密室になりやすい訪問診療、訪問看護、訪問介護など、医療介護従事者の安全確保については、早急に対策を考える必要があるように感じる。

2022年1月30日日経新聞朝刊によると、医師や看護師らに対する患者や家族の暴力・暴言は「ペイシェント・ハラスメント」と呼ばれ、各地で深刻化しており、長崎県医師会の調査では7割近い病院が被害にあってるとの結果が出ているとのこと。

また、第3者の目が届きにくい訪問看護の現場も深刻で、全国訪問看護事業協会の調査では、訪問看護師の53%が「精神的な暴力を」45%が「身体的暴力を」経験したことがあると回答したとのこと。

記事にもあるが、院内の規則を整備し、警察や弁護士と連携して、少なくとも個人ではなく組織として対応すべきであろう。

そして、在宅で医療や介護を受けている側についていうと、最低限の医療介護知識やマナーを家族全員で共有し、いたずらに不安やストレスを医療介護従事者にぶつけることが無いよう注意すべきである。

人生100年時代、このままでは社会保障制度は瓦解してしまうのではないかと不安だ。

2022.02.26

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