2021年11月13日、長谷川和夫さんは92歳だった

 

長谷川式簡易知能評価スケールを開発した精神科医で、

痴ほうという言い方を認知症に改めさせ、認知症の理解を広げることに大変尽力された。

 

さらにすごいことは、ご自身も認知症と診断されたことを公表しており、

テレビで何度かそのお姿を拝見した。

そしてご自身で認知症の世界のことを言葉に残している。

『認知症は固定したものではなく、認知症とそうでないときが連続している。つまり行ったり来たりなんだ』

『認知症は誰でもなる病気、隠す必要はないんだ』

テレビの映像からは、ご自身が講義をされようとするが、話す内容がちぐはぐになり、家族から止めるように言われても、強い意志で演台に立っている姿があった。

演台にたって話をしている様子は、まさに認知症とそうでないときの連続だった。

長年研究されてきた認知症を、自分を通して客観的に見ることができる長谷川医師と、

まったく異次元の世界に迷い込んでふわふわしている長谷川和夫さんが、行ったり来たり、

その映像を見ることができたことに、無上の喜びと感謝の気持ちでいっぱいだった。

私もいずれ認知症になることを覚悟し、その時はどうする、どう考える、

そのために家族には事前に何を言っておくか、混乱しないように

うまく認知症と付き合う方法をいろいろ考えてみたが、認知症のときの長谷川医師の様子から、自分の考えが甘いことがわかった。

 

認知症のワールドに入り込むと、完全にもとの人物とは別人になってしまう。

認知症を知り尽くした、あの長谷川医師でさえ、認知症を発症した普通の高齢者になっていた。

 

2022.02.04

カテゴリー:認知症