2022年1月25日日経新聞朝刊 オピニオンより
「ロボットが雇用を奪う」は誤りか

記事のタイトルにとても興味を持ち、長文だったが読んでみた。

 

AIが人間の仕事を奪う。

 

コロナのパンデミックで失われた仕事は戻ってこない。

ロボットによる自動化が進む。

このような理由から世界の失業率が高まると予想されたきたが、コロナパンデミックから2年が経っても、自動化により仕事が減り失業率が上がっている証拠は、世界中どこを見ても見当たらない。

逆に富裕国は人手不足が続いている、と記事は伝えている。

 

注目したい点は・・・

 

自動化は企業の利益率を高め、その結果企業は事業規模を拡大し、最終的により多くの労働者を雇用することになる可能性があること。

また、テクノロジーの進歩によって企業が新しい分野に進出したり、逆に労働集約的な作業をより付加価値が高い製品やサービスに集中させたりできるようになる可能性もあること。

記事を読んで、この二つの可能性を考えることの重要性を感じ、世界の流れ、潮目の変化を見誤ってはいけない、と感じた。

労働集約的な作業について書かれた部分の解釈は難しいが、私は自分で以下のように解釈している。

 

つまり、自動化で収益をあげられること、人という資産を他の分野に配置転換できることで、人が関わった方がよい付加価値が高い分野、差別化できる分野に再投資ができる可能性が高まり、生産性を上げながら事業を拡大できるということではないだろうか。

 

この内容は、労働集約的産業であり、恒常的に人手不足である介護事業にとっては大変わくわくする分析結果で、収益と売上の両方を向上させられる可能性があると、勝手に解釈した。

介護事業を専門にした企業のことを考えてみよう。

公的介護保険制度では、国が決めた人員基準を下回ることは許されないから、様々な国家資格を持った専門職を基準に沿って配置し、なおかつ人数を満たさなければならない。

 

 

人手不足の真相

 

また、労働者は自分たちの生活があり、それぞれ働ける時間帯が様々だが、相手とする利用者さんは24時間体制で見守らなければならない。

従って、施設における人員体制は複雑なパズルの様相を呈し、必然と人員基準を大きく上回る人数を配置せざるを得なくなる。

人員基準を上回る人数だから、利用者さんにとってはよいことでは、と思うかもしれない。

しかし現実は、複雑なシフトにより、大人数間での情報共有や意思統一が困難で、決してよい介護サービスができるとは限らない。

また、人手不足から人材の流動性が高く、高い専門性を有する人材も育成も困難である。

 

これらの課題を克服できなければ、収益は上がらず、3年に1度大きな制度改正は大きなハードルとなり、経営は安定しない。

 

もし有効なAIを導入できたら・・・

 

もしシフト作成に有効なAIを導入できたら、もし人がしなくてもよい作業をロボットに任せられたら、もし利用者さんのすべての行動がセンサーで一元的に管理されたら、この介護の世界は大きく変わる。

もちろん初期投資が大きいことは言うまでもないが、リターンは大きいのではないだろうか。

当然大手の企業は、何年も前からできるところから導入していると思われる。

 

問題は規模の比較的小さな施設

 

ただし問題は、中小企業や非営利法人など、規模の比較的小さな施設が、初期投資できるかどうかだ。

日本全国、そのような施設がたくさんあり、サービスの格差が広がることはできるだけ避けてほしい。

大手企業が早めに導入し、改善が進み実用性の高いものに進化させ、初期コストとランニングコストが小さくなるよう願うばかりだ。

とにかく、経営者は労働者の働き方の見直しと、きたる2025年問題を乗り越えるべく設備投資の中期的計画を練るべきである。

 

もし、経営者の高齢化と人材が育たない問題を抱えるのであれば、大手企業への事業承継を早めに考えることも必要であろう。

コロナパンデミックは労働集約型産業に大きな変化を与えている。

2022.02.28

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