久子さんのイメチェン

 

「久子さんのショートカット、とても可愛くて似合ってますね。」

 

いつも見てくれているスタッフが声をかけてくれた。

 

そうなのだ、1週間ぶりに会った久子さんは、とても可愛くイメージチェンジしていた。

 

「髪型すご〜く可愛くなったね、いいね〜」

 

「あっそう?、でもね、見てみて、こんなに爪が綺麗になったの、ピンク色していて健康そうでしょ。」

 

久子さんの興味は髪の毛ではなく、いつも爪の具合なのだ。久子さんが若い時、爪にマニキュアを塗っているなんてみたことがない。

逆に、髪の毛をよく手入れしている姿は、ぼくの記憶の中に、いくつもの映像として残っているのだが。

 

髪の毛は鏡がないと見えないが、爪は良く見えるから、今の久子さんには気になるところなのかもしれない。

 

スタッフの話では、最近とても穏やかで、スタッフの言うことを聞いてくれる、そして髪の毛を切って可愛くなったので、スタッフも喜んでいるとのこと。今日は来てよかった、そして安心して帰れる。

 

漢方薬の効果

そういえば、今お世話になっている訪問診療の先生が、抑肝散という漢方薬を処方してくれてから、スタッフの間では、とても穏やかになったと評判らしい。

 

飲み始めの頃は、久子さんらしい元気がなくなり、副作用かなぁ、と思っていたが、最近の様子では薬が合っているように思う。

 

ぼくもペーパードライバーならぬ、ペーパー薬剤師の端くれだが、抑肝散は興奮して眠りが浅い人に処方される漢方薬だと認識している。

 

確かに久子さんのように、興奮して暴言を吐くような認知症の症状には、抑肝散が合うのかもしれない。認知症を根本的に治す薬はまだ開発されていないが、出ている症状を抑えてくれる漢方薬は複数あるのかもしれない。

 

認知症の症状を穏やかにしてくれる漢方薬を、専門医の方々や薬学博士のみなさんに探してほしいと、久子さんを見ていて感じた。

 

イライラ、不眠、自律神経のバランスを整える、このような症状に対しては漢方薬は得意な分野だ。今までの久子さんは、とてもとても拒否が強くスタッフを困らせていたが、漢方薬のおかげでスタッフがとても喜んでいることは事実だ。

 

訪問診療の先生、ありがとうございます!

 

ぼくも少し漢方薬を勉強してみようかな。

2023.11.04