多くの、出会い

 

この方のお話もっと聞きたいなぁ。

 

66話でご紹介した今年100歳を迎えた男性のこと。

 

【第66話】驚きの真実

 

男性とは、あれからたびたびあおぞらの食堂でお見かけするようになったので、挨拶をしてお話をする機会が増えた。

 

ふるさと石川県小松市の事を懐かしいと仰ってくれる。

 

19歳で海軍に志願し、22歳のとき下士官に上るとき小松航空隊にいたことがあり、懐かしいとのこと。

 

医学的には困難なことかもしれないが、いつまでも食堂に自分の足で来て欲しい。

 

ぼくはこれまで、介護の会社の経営に10年ほど携わっていたこともあり、本当に多くの終末期の高齢者と、お話ができる機会に恵まれた。

 

食堂やベッドサイドに伺う機会があれば積極的に声をかけて、寝たきりの人には手や足をさすりながらお話しさせていただくことをお願いしてきた。

 

なんとも言えない、あたたかい幸せな気持ちを一緒に共有できることが多いからだ。

 

福祉や介護のお仕事をされている人の中に、この幸福感を感じている人は少なくないだろう。いつ頃からか覚えていないが、ぼくもその仲間入りをしていた。

 

その時々の色、空気、温度、そしてお顔の表情が浮かび、思い出すと胸が熱くなる。

 

最初は気難しかった女性

気難しい女性で最初はお近づきになれなかったが、お声を何度かかけるうちに、近くの公園に散歩に連れて行ってくださった。そして話を聞いて驚いた。大学時代に習った教授のお友達だったこと。

 

自分の部屋のトイレを外そうとする元大工さんの男性

寡黙な方だったが、良い仕事をしてきたことは容易に想像ができた。

 

地域のどこの施設にも受け入れてもらえなかった愉快な男性

施設の職員は手を焼いていたが、ぼくのことは永田社長ご苦労様です!と言って丁寧な対応をしてくれた。

 

長時間廊下を歩いていて、ほとんど喋ったところを見たことがない女性

ぼくが肩に手を当ててお名前をお呼びすると、ビクッとして困ったお顔をしていた。最後までお声を聞くことが出来ず、亡くなられた事を知った時は涙があふれた。

 

元市役所職員の男性

あおぞらの玄関に飾ってある、1m四方はある大きな透明アクリルケースの中に収まっている、割り箸や包装紙などを利用して作られた和風旅館の模型。この模型を作ってあおぞらに寄贈してくれた元市役所職員の男性。

 

7話と68話でご紹介した帰宅願望が強く、いつも帰り支度の心配をしていた女性

【第七話】うちの息子です!

 

【68話】ありがたや、久子さん

 

まだまだ多くの人のお顔がうかぶ。

人の終末期の様々な思いから、ぼくは多くを学んだ。だから、いまの活動を続けられる。

 

 

父と母のこと

 

そして忘れてはいけない二人。

 

在宅介護を続け住み慣れたマンションで最期を迎えた父に、父の看病の途中から認知症を発症し、8年を過ぎても元気な母。

 

久子さんとの旅はまだまだ続きそうだ。

 

久子さんと会話をしていても、残念ながら幸福感をまだ感じられないなぁ。

 

そういえば手も握っていない!初めてお会いする方の手はさすってあげられるのに、なんてこった!やばい、今度会った時手を握ってあげよう!

この続きは次回の報告にしよう。

2023.09.11