看護師不足

 

2022年7月18日の日経新聞朝刊に、看護師不足についての記事が掲載されていた。

現在、就業している看護師は約170万人で、今後の高齢化の推移と、医師の働き方改革や新型ウイルスによるパンデミックのことを包括的に考えて試算すると、このままでは近い将来、最大で約30万人の看護師が不足するとの予測が出ている。

厚労省の推計では65歳未満の、看護師免許を持ちながら現場から離れている潜在看護師は約70万人いるとのこと。

 

2015年10月から、努力義務だが、法律に基づき保健師、助産師、看護師、准看護師の免許を持ちながら働いていない人は、都道府県の「ナースセンター」に届けることになっている。

 

しかし、現在のところまだナースセンターが運営する潜在看護師のデータベース「とどけるん」には14万人しか登録されていない。

 

7年近くたつが、期待したほどには登録が増えていないことと、新聞記事によると、コロナ医療体制の問題が発生した2020年4月以降、日本看護協会(日看協)の働きかけによる、コロナ医療の最前線の病院勤務に復帰した人は224人にとどまったとのこと。

 

やはり働いていないのは、それぞれの深い事情があるのだろう、潜在看護師への働きかけは、看護師不足問題解決に対しての効果は少ないようだ。

 

看護体制について思うこと

 

私は、長年介護事業の現場をみてきて、看護体制について思うことがあります。

 

それは、多くの高齢者を見守るためには、看護師の感と勘が大切で、それらに基づく早め早めの予防対策となる、気配りや目配りが大変重要であるということです。

 

言いたいことは、高齢者の生活を支えるためには多くの看護師を必要としますが、決して医療の世界に必要な高度な医療処置技術が必要なのではなく、認知機能が衰えてきたこと、また筋力や体力が落ち精神的に変化してきたことによる、高齢者の様々な生活障害に対して支えるための必要な資質が重要だと言うことです。

 

正看護師と准看護師

 

看護師の資格には正看護師と准看護師の資格があることをご存じでしょうか?

 

正看護師資格の受験には、高校卒業後、3年間の看護師学校または短期大学を卒業するか、または看護大学を卒業する必要があります。

しかし、准看護師の資格であれば、中学卒業後に2年間の准看護師養成学校を卒業することで准看護師試験を受験することができます。

 

私は、看護師不足問題を解決するポイントは、2年で受験できる准看護師にスポットライトを当て、高齢者の生活を支えるために必要な看護師の育成に力を入れることだと思っています。

 

もちろん、正看護師の資格をもった方々にも高齢者の生活を看てもらうことや、マネジメントに加わってもらうこと、医療機関との連携や教育に携わってもらうことはとても重要です。

 

しかし、2025年問題を目前に、看護師の人数が大きく増えない現状を考えると、正看護師と准看護師の看護師業務の制度上の役割分担による効率化は必須です。

 

具体的には、高齢社会に合わせた看護師業務の新制度を作ること、その教育カリキュラムを作ること、そして准看護師養成校を増やすことが必要なのです。

 

高齢者の生活を支えるために必要な看護とは

 

高齢者の生活を支えるために必要な看護は、認知能力が衰え、気力が衰え、孤独や苦痛に耐えながら生活している高齢者への、長期間にわたり寄り添い気遣うことができる、人間力や志というものがベースになると思うのです。

そんな曖昧なもの、どうやって教育するのか?という疑問もあるかもしれませんが、私は現場で何人もの素晴らしい看護師に出会っていて、そのような看護師が准看護養成学校の理事長や教育者になればいいことだと思っています。

 

なぜなら、事実そのような養成校が2016年に埼玉県の川口市にできたからです。

 

大橋医療高等専修学校です。

 

理事長の大橋ひとみさんは、養成校を立ち上げることに対して多くの反対があり、設立に時間がかかったと教えてくれました。

しかし多くの苦労を乗り越え、設立後は経営や運営は順調に進み、多くの教育理念に沿った准看護師を養成しています。

 

大橋さんは正看護師として、大きな病院で、高度な知識や技術が必要とする手術に立ち会う経験を重ねた後、終末期医療の現場で何百人という多くの人を看取ったという幅広い実績をもった人です。

 

そして、その多くの経験から日本の看護師体制に疑問をもち、自ら養成校を立ち上げるという高い志とパワーを持った人です。

 

准看護師養成校を増やすことに多くの反対が出てくることは、古い体質を守りたい既得権や名誉にかかわる何か大きな問題があったのでしょうか。

 

とにかく、もうそんなことを言っていられない時代にはいったことを、政治と社会は認識して、新しい形を創ることが急務です。

 

内閣府、厚労省、日本看護協会は、看護師不足を解消するための構造的な改革を進め、これから数十年は続くと考えられる2025年問題に対して、大きく舵を切ってほしい。

2022.08.27

カテゴリー:介護全般