介護問題は突然やってくる

団塊の世代の人たちの多くが75歳を越えてくると、病気や体の衰えから介護が必要となる高齢者が増え、突然介護問題に直面し離職を考える人も加速度的に増えるだろう。

その団塊の世代の子供たちは、およそ40代50代だから、おそらく社会では重要なポストにある人が多いだろう。

そのような人たちが一人で悩んだ末、ある日突然退職願を出してきたとき、部署長や経営者も突然の出来事に大きな混乱と不安を抱えるに違いない。

 

つまり、介護がある日突然やってくる問題であることは、当事者家族だけでなくその人が勤める会社にとっても、
ある日突然やってくる大問題なのである。

 

実は厚労省も仕事と介護の両立支援を促進している

厚労省もこの問題に対しては育児・介護休業法を整備し、仕事と介護の両立支援を推進している。
育児休業については、多くの若い夫婦の利用事例を聞くことがあり、イクメンも増えてきた。

 

しかし介護離職問題が新聞でよく見るわりには、介護休業や介護と仕事の両立支援の話題はあまり聞かない。

突然のことで混乱し、どこにどのように相談したらよいのかわからず、仕方なく安易に離職を選ぶ人が多いのではないだろうか?

私もこれまで介護無料相談の活動を行ってきて感じたことだが、本当にどうしようもない段階にこないと、人は動かないものだと。

 

家族のプライバシー、それも人に知られたくないような事を、簡単には第3者に相談はしたくない。
親が元気で問題が表面化していなければ、いつか考えればいいと問題を先送りしてしまう。これは当然のことである。

地震や災害と同じで、いつかやってくることは認識しているが、必要な対策を打つ行動を起こす人が少ないことと似ている。

 

仕事と介護の両立支援が進み、介護離職問題に取り組む企業が増えるまでには時間がかりそうだが、少なくとも法律が制定され20年以上がたち、何度も改正され、企業も認識だけはしているはずである。

 

今からでも遅くはない。今すぐ企業が取り組めるヒント

厚労省のホームページには、法律の詳しい説明とともに、仕事と介護を両立させるための支援方法の具体的なプランや事例、
プラン策定や面談時に使えるツールも用意されている。

 

これらの資料を読むと、法律だけを就業規則にもりこむだけでは十分ではないことがわかる。

介護の方法は、100人いれば100通りあるといわれるほど、その人の家庭環境や病歴や経済性により大変複雑な様相を示すものだ。

従って仕事と介護の両立支援を、法定内の仕組みだけで考えておけば十分、というような単純なものではない。

できれば、介護休暇だけでなく有給休暇を時間単位で利用できるとか、所定労働時間や残業などの制限について、

法定で定められた回数以上使える制度に変えるなど、会社の就業規則で使いやすいものに補足していくことが望ましい。

 

また、常に時間外労働や所定時間外労働が長時間になっている職場は、介護問題に直面している人がいるいないに限らず、従業員一人ひとりの働き方を見直すべきである。

 

会社に対する印象アップも図れる

もし介護問題に直面した従業員が、人事担当者から説明を受け、職務をそのままに働き方が変えられることを知り、
上司がさらに日々配慮してくれたなら、明るい希望を見出し、どんなに会社や上司に感謝するだろう。

 

今は大丈夫だが近い将来、家族の介護の不安を感じている従業員は同じように明るい希望を見出すことができるだろう。

会社に対する社員のエンゲージメントも向上し、労働時間は減っても生産性は上がり、業績の向上も大いに期待できるはずである。

 

このような改革ができない理由

経営トップがこのことに気づいていないからだ。

 

なぜなら、経営トップは時間を自由に使え、経済的にも余裕があるため、
自分が突然介護問題に直面しても解決する選択肢は多く、さほど困らないため、介護離職問題への危機感が弱いからだ。

 

さらに、このような検討は就業規則の変更を伴うこと、働き方や組織構造の変更も伴うことから、人事労務の担当者だけでは困難である。

ぜひとも、担当役員と経営トップが、自らこのリスクコントロールに取り組んでほしい。

そしてこの問題をうまくリスクコントロールすることは、単なる損失回避を目的にしたものではなく、優秀な人材を確保し、
さらに会社が必要とする専門スキルをもった人材を増やすことを可能とする、会社の成長戦略の柱になるはずである。

 

うまく説明できないが、この問題の解決に向けた活動は、最近よく目にするSDGsの17の目標のうち、

 

3. すべての人に健康と福祉を
8. 働きがいも経済成長も

 

この2つの目標に当てはまっているので、企業にとっては顧客や投資家に向けたアピールになることは間違いないだろう。

経営者は介護離職の予防については、仕方なく対策を打つのではなく、SDGsを含め能動的に会社の成長戦略の柱として位置付けるように発想の転換が必要である。

 

社長、時代は変わりましたよ!

 

2022.01.20

カテゴリー:介護と仕事の両立