母親担当のケアマネージャーさんに聞いてみた

住み慣れた自宅で介護サービスを受けながら、家族に見守られている認知症高齢者の方々の中で、家族や親戚、地域の医療介護従事者、ご近所との関係が良好な、施設に入らなくてもよいと感じる高齢者は全体の何割ほどだと思いますか?

 

『はっきりわかりませんが、感覚としては1/3以下でしょうね』

 

明確な数字が出せるような問いかけではないが、はっきり言えることは、少数派だということだろう。

 

さらに聞いてみた

 

認知症介護については、ケアマネージャーとして何が大変ですか?

 

『認知症の症状は本当に様々ですが、それらの症状から起こる問題というよりは、ご家族とご本人との関係から起こる問題が厄介です』

 

具体的には、家族による虐待が日常的に起こるケースや、ニグレクトと呼ばれる家族の介護放棄や怠慢、そして、介護する家族が被る日常生活への支障、つまり健康被害や介護離職、ヤングケアラーの問題などの事である。

 

それらは、介護問題の本質と言っていいだろう、私には深い闇のように感じる。

 

ケアマネージャーも、職責の範囲を超える問題が多く、対応に苦慮しているようだ。

 

大きな事故や事件に発展しないように、地域全体で見守るしかないのだろうか。

 

伝えたいこと

 

認知症介護は、在宅で看るには限界があり、限界を感じた時点では手遅れになることを!

もちろん、複数の家族や親戚の人たちが介護に協力的で、医療や介護従事者との連携もとれ、在宅で暮らせる認知症高齢者もいるだろう。

しかし、そのように恵まれた人は少数派である。

 

また、最初のころは協力的だった家族も、症状の悪化とともにストレスが蓄積し、突然限界が見えてくることも想定しておいた方がよいだろう。

在宅介護を希望する場合も、施設への入居の準備は、同時並行で進めておくことが大事だ。

 

とても残念で悲しいことは、両親への感謝の思いが強く、子供が介護することが当然と考えている優しい人たちほど、認知症の症状に耐えられなくなると、虐待に及びやすいことだ。

 

痛ましい事件や事故が起こらないよう、決して少なくない悲しい現実と、初期対応の正しい選択方法を伝えていきたい。

 

さらにケアマネージャーさんはこのような事も話してくれた

 

『家族も早く施設に入れたいと思っていてもできないケースは、経済的な問題よりも、家族間のパワーバランスの問題が多いです。』

 

つまり、家族の長い歴史の中で、だれも本人を説得できない関係にあり、本人が施設入居を強く拒否している場合だ。

このようなケースは、本人の健康状態が悪くなり入院することを待つほかないとのこと。

あいうゑおのコラムでは何度も書いたが、人生100年時代、認知症は誰もがかかる病気と考えて人生設計を家族と共有してほしい。

 

そして、介護が必要になったとき、準備や選択がうまくいけば、家族との会話の時間が増え、これまでより幸せな時間を作っていくことができる、ということも知ってほしい。

 

認知症介護のことをよく知らないで、準備が遅れ、選択の幅が狭まり、介護離職や虐待の問題に発展することが無いよう、これからも必要な情報を繰り返し伝えていきたい。

2022.07.04

カテゴリー:認知症