高齢者施設ってどんなイメージ?

 

ふつう皆さんは、高齢者が入る施設というと、どのような所をイメージされるでしょうか?

 

一般的な名称としては、有料老人ホームを思い描くと思います。

 

あとは、グループホームとか特養などの名称も、ご存じの方は多いでしょう。

 

ケアマネージャーさんと話をするようになると、サ高住とかケアハウスとか、老健施設などの名称も出てくるでしょう。

 

※サ高住とは、サービス付き高齢者向け住宅のこと

 

これらの施設にどのような違いがあるかは、入居が決まったあとも、はっきり分からないかもしれません。

 

なぜ色んな種類の施設があるのか?

 

それは、介護保険制度が始まってから20年以上が経つ中で、急激に施設の利用度が高まり、国や自治体の財政負担増をどのようにコントロールするか、家族の負担をどのようにコントロールするか、紆余曲折を経ての結果なのです。

 

想像してみてください。

 

80歳を超えても健康でゴルフや旅行を楽しめる方と、70代で認知症を発症して24時間見守りが必要な方が、同じ施設でお部屋が隣同士では、何か変ですよね。

 

つまり、一口に高齢者と言っても、65歳以上の方々の健康状態や経済力、家族関係などは、まったく違ってくるため、住まいの環境が一律とはあり得ない事なのです。

 

経済力だけ見ても、国民年金だけの人は、とても年金だけでは暮らしていけないでしょう。
医療依存度の高い人や認知症が進んでいる人は、24時間のケア体制が必要になるでしょう。

 

一方、75歳を過ぎても一人でなんでもできる人は、介護サービスはいらない、自由にさせてくれと言うでしょう。

 

また、お金に余裕がある方々は、ホテルライフのような住まいや、付加価値の高い自費サービスを求めるでしょう。

 

これからの30年、後期高齢者という名前を付けられた75歳以上の方々が増える中で、国はどのように高齢者の住いを考えているのでしょうか?

 

早10年

 

厚労省は地域包括ケアシステムという名で、2025年問題を解決しようと進めて、はや10年が経ちます。

 

中学校区ほどの領域をカバーする地域包括支援センターを全国に設置して、高齢者が必要な医療、介護、予防、生活支援サービスを、住み慣れた地域で切れ目なく提供できる住まいを提供するものです。

 

厚労省のデータによると令和3年4月現在、地域包括支援センターは全国で5270か所設置されているようです。

 

『介護に直面したら、まず地域包括に相談してください』と言われるのは、このシステムをうまく利用してもらうためです。

 

私は、この地域包括ケアシステムができたころ、介護事業の経営責任者だったこともあり、よくセミナーに参加しながら、どのように経営に生かしていくか考えていました。

一言で言うと、とてもよくできたシステムだと思いました。

 

薬剤師の立場からも、ようやく薬剤師が高齢者医療介護の現場で活躍ができると、胸がわくわくする思いでした。

 

それまでは、自分の家での暮らしが困難になると、おおむね有料老人ホームか特養かグループホームからの選択でしたが、このシステムの新しい特長として、サービス付き高齢者向け住宅という住まいの選択肢が増えたのです。

 

名前が長いので、よくサ高住と短縮して呼ばれていますが、24時間体制で介護サービスをする介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームやグループホームと違い、高齢者は自由な生活をしながら、必要な時だけ必要な分だけ公的介護保険サービスを受けられる、高齢者専用のマンションかアパートのような所です。

私は、このサ高住が増えることは、これからの高齢者にとって、日本の社会保障制度の維持という意味からも、本当に素晴らしいシステムができると確信していました。

 

サービス付き高齢者向けサービス情報提供システムの情報によると、令和2年11月末時点での部屋数は26万を超えているようです。

 

サ高住のメリット・デメリット

 

メリット:国や自治体、そして本人や家族も費用負担をコントロールしやすい

必要ない人はサービスを使わない、必要になったとき必要な分だけ使って、費用については自己負担分の1割か2割のお金を払えばよいのです。

それは、入居者さん本人が、自由な暮らしができることにもつながります。

 

デメリット:医療介護体制が完備されているわけではない

 

医療依存度が高くなり24時間体制の見守りが必要になった場合には、そのような医療介護体制ができていないサ高住は、対応が困難になり、24時間体制の介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホーム、または医療体制の整った施設への転居が必要になります。

 

このようなメリット・デメリットを考えると、サ高住の建物の中、あるいは同じ敷地内に、訪問看護やデイサービス、訪問介護のサービス提供事業所があると、要介護度の高い人の受け入れや、看取り対応が可能なサ高住として、地域包括ケアシステムの拠点となると言えるでしょう。

 

特に訪問看護の存在は大きく、介護予防の視点からも重要な存在で、うまく機能すると、サ高住に入居してから健康を取り戻す高齢者が確実に増えます。

 

私がサ高住の開設と経営に携わった時、一番驚いたことは、入居されてしばらくすると多くの方々が元気になられたことです。

 

おそらく、それまでは食事も運動も、とても不健康な環境にあったと思われます。

 

理想とするサ高住とは?

 

このようなサ高住を通しての経験から、私なりの理想とするサ高住の形があります。

 

サ高住を運営する企業に声を大にして伝えたい、訪問看護をできるだけ併設してほしいこと、そして薬剤師と看護師の連携を強化してほしいこと、最後に食事にこだわってほしいこと。

看護師と薬剤師の連携がうまく取れると、訪問診療が必要な方に月2回ほど訪問してくれる医師がとても助かるのです。

 

担当の医師でも毎日患者さんと顔を合わせているわけではないので、月に2回程度の往診だけでは、いくら医師といえども情報が少ないため、薬と普段の健康状況を把握している看護師と薬剤師からの情報が非常に診断と治療に役立つのです。

 

訪問診療の経験豊富な医師はまだまだ少なく、訪問診療ができる医師を育てるためにも、看護師と薬剤師の患者情報や普段の様子から感じる意見は必要です。

 

絶対オススメできないサ高住

 

最後に、絶対におすすめできないサ高住は、食事がまずい、食事を配達に頼っているところ。

暖かい出来立ての食事を提供してくれる、さらに気を付けたい点は、冷凍ものをできる限り少なくすることと、タンパク質の量にこだわっていること。

 

食事に満足されているか否かを知る、私の客観的な判断基準があります。

食べ残した量を必ず図り、全体で5%以下を目指し、10%を超えた場合は原因を調査します。

 

その数字をもとに、メニューや栄養バランス、そして食材を考えていくことが、介護予防につながり、とくに認知症予防にもつながるのです。

 

高級食材を使うのではなく、旬の食材と、天然のだし汁を使い、出来立ての暖かいお料理を出してほしいのです。

安い冷凍ものの食材ばかり使っていたのでは、旬の美味しい食材の味を知っている高齢者はがっかりします。

 

なぜなら、一番の楽しみは食事ですから。

 

このように、理想とするサ高住が増えることではじめて、国が進める地域包括システムが2025年問題に対して有効に機能すると、私は確信しています。

2022.05.28

カテゴリー:介護全般